ドS弁護士は甘い罠を張る。~病院で目覚めたら危険な男の婚約者になってました~
アパートから持ってくれば良い物まで七生は買ってくれた。
化粧品、服、バッグに靴、食器にクッション。
インテリアショップでは鏡台まで選び、すべてがプレゼントだという。

もう一生分のプレゼントを貰った気がする。
どうせならベッドが欲しいと言ったのに、七生には二言目で却下した。

戸惑うことは多かったが、デートが嫌ではなかった事が驚きだった。
もっと緊張して、もっと気疲れすると思ったのに。
まだ動きが鈍い文を気づかって、車から荷物持ちまでそれはそれは甲斐甲斐しかった。

終始腰を支えてくれていた腕を思いだして、顔を赤くする。

大丈夫かと小まめに声をかけてくれて、疲れたと言えばすぐにカフェに入ってくれた。
紳士的だと言えばそうなのだが、女の扱いに慣れているのだと思うと胸がもやっとする瞬間があった。

買い物はすべて七生が支払ってくれた。
たぶん。
たぶんというのは、七生の支払いを目撃していないからである。

どういう仕組みなのか、スーツ姿の店員がずっと後ろをついてきて、七生は財布も出さなければサインもせずに決まった商品を指さすだけだった。商品をレジに持っていく訳でもない。

店員も、その度にうやうやしくお辞儀をするのみ。
買い物が終わると荷物も受け取らずにホテルに移動し、小篭包が有名な中華料理店で食事をしてから帰宅した。

すると、百貨店で決めた商品がすべて部屋にあるではないか。
いったいどんな魔法を使ったのかと驚いたら、七生はお腹を抱えて笑っていた。
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