ピースな私と嘘つきなヒツジ
1.心地よい響き
「ねぇ。酔っぱらってる? 大丈夫?」
名前も顔も知らない若い男性が心配そうに覗き込見ながら声をかけてきた。
(あれ…? この声知ってる…。大好きな動画配信者のNAGIさんだ…。)
「うーーん、ちょおっとだけね~。」
(推しのNAGIさんとお話してるなんてなんて最高な夢なの!)
声をかけてきた男性に向けて、親指と人差し指の先をほんの少しだけ離して見せた。そして、推しと会話していると思い込み、顔がへらへらとゆるむ。
すっかり夢の中だと思っている千夏は会社の親睦会ですっかり飲み過ぎていた。過去最大量のアルコールを体に入れたと思われる。
ーーーーーーーーーーーー
『市島さん、大丈夫ですか?タクシー呼びましょうか?』
足元がおぼつかない千夏をみて後輩の女の子にそう言われたが、お酒で赤く染まった頬を撫でる夜風が心地よくて歩きたい気分だった。
『大丈夫!だぁーいじょぶ!ここから駅近いから歩いていくわ。』
そう言って二次会に向かう同僚や後輩たちに心配そうな表情を向けられながら別れたが、どこから見ても千鳥足な千夏はナンパ男たちの恰好の的だった。
『お姉さぁん、だいぶ酔っぱらってるみたいだね~。 俺たちが介抱してあげよっか?』
いかにもチャラそうな身なりのナンパ男たちが数人で千夏を取り囲んであからさまに近くのホテルへと連れこもうとしていた。
『あんた達に介抱されなくったって大丈夫よ!』
千夏は大人の女性を意識して払いのけるようにさらりとナンパを交わしたつもりだが、男たち数人では力で当然かなわない。ナンパ男たちの1人が千夏の腕を掴むと、強く腕をを引き寄せ肩に手を回して抱きついてきた。
『そんな歩き方じゃ危ないからさぁ〜、向こうで少し休憩していこうよ。』
男たちも酒を飲んでいるのか、体からアルコールとタバコの臭いが漂い、更に男たちの額から鼻筋を通って頬を通る不自然な光沢やニヤついた顔がとても不快でたまらなかった。
『ちょっと!放しなさいってば!』
男の腕を振り払おうとするが、がっしりと肩を掴んだ手はなかなか離れてくれない。すれ違う通行人は男性数人に囲まれた女性が町中に居ても皆見てみぬふりをして通り過ぎている。居酒屋やBarが立ち並ぶこのエリアでは日常茶飯事の光景であった。
(えっ…、これはちょっとヤバいかも…。)
普段から物事をあまり深く捉えない性格の千夏にもやっと危機感が芽生えたころだった。
『おい、やっと見つけた。』
(…ん?だれ?)
さっき別れた職場の人間が千夏を追いかけてきたのかと、ぼんやり声のする方を見つめる。
長めの前髪と黒縁メガネに隠された男性の顔をどこかで見たことがあるような気もしたが、思い出せそうで思い出せない。酔いが邪魔しているのか、直ぐに頭に思いつく名前はなかった。
『探したじゃんか!』
そう言うと、ナンパ男たちから切り離すように千夏の手をとって距離を取らせた。
『なんだ、男連れかよ…』
吐き捨てるように千夏の肩を掴んでいた男がそう言うと、声を掛けてきた男性を睨みつけるようにしながらナンパ男たちはどこかへと消えていった。
名前も顔も知らない若い男性が心配そうに覗き込見ながら声をかけてきた。
(あれ…? この声知ってる…。大好きな動画配信者のNAGIさんだ…。)
「うーーん、ちょおっとだけね~。」
(推しのNAGIさんとお話してるなんてなんて最高な夢なの!)
声をかけてきた男性に向けて、親指と人差し指の先をほんの少しだけ離して見せた。そして、推しと会話していると思い込み、顔がへらへらとゆるむ。
すっかり夢の中だと思っている千夏は会社の親睦会ですっかり飲み過ぎていた。過去最大量のアルコールを体に入れたと思われる。
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『市島さん、大丈夫ですか?タクシー呼びましょうか?』
足元がおぼつかない千夏をみて後輩の女の子にそう言われたが、お酒で赤く染まった頬を撫でる夜風が心地よくて歩きたい気分だった。
『大丈夫!だぁーいじょぶ!ここから駅近いから歩いていくわ。』
そう言って二次会に向かう同僚や後輩たちに心配そうな表情を向けられながら別れたが、どこから見ても千鳥足な千夏はナンパ男たちの恰好の的だった。
『お姉さぁん、だいぶ酔っぱらってるみたいだね~。 俺たちが介抱してあげよっか?』
いかにもチャラそうな身なりのナンパ男たちが数人で千夏を取り囲んであからさまに近くのホテルへと連れこもうとしていた。
『あんた達に介抱されなくったって大丈夫よ!』
千夏は大人の女性を意識して払いのけるようにさらりとナンパを交わしたつもりだが、男たち数人では力で当然かなわない。ナンパ男たちの1人が千夏の腕を掴むと、強く腕をを引き寄せ肩に手を回して抱きついてきた。
『そんな歩き方じゃ危ないからさぁ〜、向こうで少し休憩していこうよ。』
男たちも酒を飲んでいるのか、体からアルコールとタバコの臭いが漂い、更に男たちの額から鼻筋を通って頬を通る不自然な光沢やニヤついた顔がとても不快でたまらなかった。
『ちょっと!放しなさいってば!』
男の腕を振り払おうとするが、がっしりと肩を掴んだ手はなかなか離れてくれない。すれ違う通行人は男性数人に囲まれた女性が町中に居ても皆見てみぬふりをして通り過ぎている。居酒屋やBarが立ち並ぶこのエリアでは日常茶飯事の光景であった。
(えっ…、これはちょっとヤバいかも…。)
普段から物事をあまり深く捉えない性格の千夏にもやっと危機感が芽生えたころだった。
『おい、やっと見つけた。』
(…ん?だれ?)
さっき別れた職場の人間が千夏を追いかけてきたのかと、ぼんやり声のする方を見つめる。
長めの前髪と黒縁メガネに隠された男性の顔をどこかで見たことがあるような気もしたが、思い出せそうで思い出せない。酔いが邪魔しているのか、直ぐに頭に思いつく名前はなかった。
『探したじゃんか!』
そう言うと、ナンパ男たちから切り離すように千夏の手をとって距離を取らせた。
『なんだ、男連れかよ…』
吐き捨てるように千夏の肩を掴んでいた男がそう言うと、声を掛けてきた男性を睨みつけるようにしながらナンパ男たちはどこかへと消えていった。
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