【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。


「じゃあ、立ち上がったら扉の先まで走って。ここは危険だから」

「でも、」

「ここは俺に任せて」

「……わかった」

立ち上がった私は真宙くんに言われたとおり扉を目掛けて走った。

後ろからは鈍い音と香坂のえずくような声が交互に聞こえてくる。

階段の踊り場へと到着すると、下から「瑠佳さん!」「姫!」と声をかけられた。


「と、冬馬くん!皆もいたの!?」


階段の下で待ち構えていたのは冬馬くんと闇狼のメンバーたち。

「俺らはここで待機するように言われてたんです」

「そうだったんだ」

「す、すみません俺のせいで!」


冬馬くんは私の目の前で正座をすると地面にぴたりと頭をつけた。


「ちょ、冬馬くん!?」

「全部、俺の責任です」

「何言ってるの。違うよ!ほら、顔あげて」

私が否定をしても、なかなか顔をあげようとしない冬馬くん。


「はいはい。その話はまた後で。中で総長が戦ってるんだから。つっても、もう勝敗はついたけど」


香坂の落としたナイフを片手に持ちながら、怜央たちを指差す真宙くん。

中には右手から血をポタポタとたらす怜央と、大の字になって倒れる香坂がいた。

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