【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
私は急いで怜央の元へと駆け寄る。
「怜央……!手から血が、」
ハンカチを持って近づく私を怜央は左手だけでそっと抱き寄せた。
「怜央…………?」
「ごめん」
怜央はその3文字を口にした後、私の肩に顔をうずめる。
ずっしりとした重みと、額から伝わる熱。
「どうしたの?どこか痛い??横になる??その前に右手の怪我は、」
「なんともねーよ」
なんともないなんてことある?
戸惑う私に真宙くんが「それただの返り血だから心配いらないよ」と教えてくれた。
その言葉にほっと胸を撫で下ろす。
しかし、真宙くんの言葉だけでは安心できない。
「他は?本当に痛いところはない?」
「俺はお前の弟か」
「へ?」
「さっきから人の心配ばっかしてんじゃねーよ。それよりも他に言うことがあるだろ」
顔をあげた怜央は私の瞳を真っすぐ見つめる。
他に言うこと……?あっ………!
「助けてくれてありがとう」