【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
「そんな機能があるなら、もっと早く教えてくれれば良かったのに」
何気なく口にした私の一言によって、怜央の表情が曇る。
「黙ってて悪かった」
そんな顔をさせたかったわけじゃない。
何してるんだろう、私。
GPS機能について私が今日まで何も知らされていなかった理由なんて少し考えればわかることだ。
それは私が雇われの姫だから。
「ううん。怜央の判断は正しいよ。チームの大切な秘密?になるのかな。そんなの軽々しく教えちゃだめでしょ。だって私、本物の姫じゃないし」
ああ、今の私は香坂と同じ。
薄っぺらい笑顔を貼り付けている。
「あ、でも一つだけ聞いてもいい?GPS機能があるってことは、普段から私の居場所がわかってたの?」
「いや、位置情報をONにするのは今日みたいなことがあった時だけだ」
「へー、遠隔で操作までできるんだ。すごいんだね、この狼」
「ああ。でも、GPSだけじゃどの階にいるのかまではわからなかった。俺たちがすぐに瑠佳の元へとたどり着けたのは、防犯ブザーの音があったからだ」