主役になれないお姫さま
「なんか飲む?…水でいい?」

「はぃ。ありがとうごらいます。」

ウォーターサーバからグラスに水を注ぎ彼女に渡した。

「シャワー浴びてから寝るか?それとも何か話を聞こうか?」

帰宅後に一杯1人で飲み直そうとしていたが、それを止めて自分用のコーヒーを淹れた。

「俺の名前は横谷一真。年は今年で39になる。いわゆるアラフォーだ。取り敢えず、君の名前を聞いてもいい?呼びずらいから…。」

「…しの、です。三浦 詩乃(みうら しの)です。今年で39ってことは…、ウフッ…横谷さんと干支が同じだ。意外と年いってるんれすね。」

 一回りも違うのか…。
 とんだ拾い物だ。

「詩乃ちゃんは結婚式で盛り上がってハメを外しすぎちゃったのかな?」

「……ぐすっ。」

 なんだっ?
 地雷でも踏んだのか?

またスイッチが入ってしまったのか彼女は泣き始めてしまった。

しかたなくBoxティッシュを渡す。

すると彼女はぽつりぽつりと涙の原因を話し始めた。





「浮気された元彼と同期の結婚式ねぇ…、しかもデキ婚ときたか…。そりゃヘビーだったな。詩乃ちゃんとそいつが付き合ってるの誰も知らなかったのか?」

「彼が社内でバレるとからかわれそうで嫌だって言うから…。内緒にしてくれって言うから…。ぐすん…。」

「内緒にって…。そいつ浮気する気まんまんじゃねーか。」

 可哀想に…。
 今でもその男と相手を気遣って暴露せずに1人で耐えているのか…。
 俺ならこんな可愛い子にそんな思いさせないのに…。まぁ、こんなおじさん相手にされないだろうがな。

「私、昔から浮気されて別れるパターンなんです…。なんでいつも浮気されちゃうんだろ…。」

彼女の涙を浮かべた姿が俺のSな部分をくすぐり可愛いと思った。

「なんでと言われてもなぁ…。」

 男の浮気なんて後先考えるもんじゃないからなぁ…。彼女と別れるのだって、相手の女が強くて、流されただけだろう。

「私だけ好きになってくれる人なんて、この世にいないのかもしれない…。」

無意識に落ち込む彼女をそっと抱きしめていた。
こんなに儚げで守ってあげたいと感じたのは初めてだった。

「そんなことないぞ。君は充分魅力的だ。変な男がその魅力に我慢できず寄ってきただけだ。」

「なら何でいつもフラれるの…?」

「相手の男が悪いだけだ。まともな男なら高根の花である君を口説く前に諦めるだろう…。」

目と目が合うと、互いに引き付けられるように唇と唇が触れる。

「俺なら恋人以外は抱かない。意味わかるか?」

「浮気なんてしないってこと?」

「…それもあるが。」

「他には何があるの?」

「これから君を抱くってことはそういう事だ。嫌か?」

「…いやじゃない。…です。」

足元がおぼつかない彼女を抱え上げ寝室に向かった。
< 6 / 53 >

この作品をシェア

pagetop