後宮鳳凰伝 愛が行きつくその先に
「殿下、今日は協力してくれてありがとうございました。おかげで、母上の形見を失わずに済みましたわ」

「そのことなら、美凰に礼を言いなさい」

「もう言われましたから大丈夫ですよ」

美凰が微笑んで言うと、秀快も同じように微笑んで美凰の頭を撫でる。

「姐姐、殿下。私はこれで失礼しますね」

「分かったわ。惢真、お見送りしてあげて」

「かしこまりました」

玲雲と惢真が去ったのを確認して、秀快が頬に口づけてくる。

「まったく……ようやく君から文をもらえたと思ったら、郭御華の扇子を返すように協力しろだなんてね……」

不満げにしながら、ぎゅっと強く抱きしめてくる。

「機嫌が悪そうですね」

「君のせいだよ。恋文をもらえなかったからね。罰を与えようかな」

「私は恋文を書く柄じゃないですよ。それに、文よりも言葉で伝える方が私は好きですわ」

手を首にまわして普通に言おうとしたが、秀快よりも頭一つ分背が低いせいで上目遣いで甘えているようになってしまった。

「美凰……それは誘っているのかな?可愛すぎるよ?」

「はい?」

何を訳の分からぬことを言っているのだと怪訝な表情をしていると阿蘭と惢真が帰ってきた。

惢真は良いのだが、阿蘭の身なりを見て驚く。

本来、女官たちの化粧は忙しい時間を削らないためと主よりも目立ってはいけないことから濃い化粧は禁じられている。しかし、阿蘭は化粧が濃いうえに、衣装も女官の物とは思えないほどの上等な物を着ている。

「殿下と美凰さまにご挨拶を」
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