後宮鳳凰伝 愛が行きつくその先に
非常にまずい……。

秀快は規則に厳しいので、阿蘭に罰を与えかねない。

案の定、秀快は少し眉をひそめている。

「阿蘭、中庭の花壇に水をやってきてちょうだい。日照りが良いから土が乾きすぎていたの。よろしくね」

この場から、阿蘭を離れさせるために急いで用事を言いつけると、阿蘭は不満そうにしながらも渋々中庭へと行く。

「もう帰る。そなたはゆっくり休め」

「お見送りいたします、殿下」





「殿下、不機嫌そうでしたね……」

「ええ。阿蘭の身なりが良くなかったせいね……。阿蘭を呼んできてくれる?」

「かしこまりました」

秀快が不機嫌なのは、もちろん阿蘭の身なりが派手過ぎたこと。秀快はもともと規則が大嫌いで、よく小さい頃は主上から叱られていた。そんな秀快が規則に厳しくなったのは、尊敬している長兄の皇太子殿下に、規則を守らずに後宮内で馬を走らせていた秀快がぶつかり、怪我をさせてしまったことが原因だ。それ以来、秀快は誰よりも規則を守っている。

「美凰さま、お呼びですか」

「阿蘭、今日の化粧はいつもより濃いわね。衣装も……貴族の令嬢のようだわ」

「お褒めにいただき光栄で――」

「あなたは何かしら?貴族の令嬢?それとも私の侍女?」

「美凰さまの侍女です……」

「ならば、わきまえなければならないわよね?今のあなたの身なりは規則違反よ。今回は大目に見てあげるけど、気を付けなさい。分かったわね?」



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