死神キューピッド
「ああ、あったな」


懐かしそうに目じりを緩める虹太に、昔話をきかせるように、ぽつり、ぽつりと語ってきかせる。


ついこの間のことのように感じるけど、なんだかずいぶんと遠くまで来てしまった気がする。


「もし子供がいたらこんな感じなのかなあ、なんて妄想しちゃったんだ。そしたら風船が風に浮いて、その子が柵を乗り越えて風船を取ろうとしたの。その子のお母さんらしき人は、ちょうど看護師に声をかけられたところで気が付いてなくて。考えるより先にその子に駆け寄って、手を伸ばして。気が付いた時には一緒に落下してた」


「絶望して、……とかじゃなかったんだな」


「うん、正直、絶望するヒマはなかった。うわっ、えっ? ぎゃああっ!……みたいな」


「……知ってるよ、全部、見てたから」


「ごめん。かなり、キツイもの見せちゃったよね」


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