死神キューピッド
こいつ、うちのコンビニによく来ていた客だ。
甘く整った顔立ちで、長身で。
やたらと目立つ奴で、小柄で可愛い女を連れていた。
傍から見ていても、その女に惚れてることがダダ洩れてて、ほかのバイトが憧れのカップルだなんだと騒ぐのを、内心、鬱陶しく感じていた。
そうだよ、こいつは誰にでも好感を抱かれるような、俺とは生まれながらにスペックの違う男。
生まれた階層も生きてきた世界も目にしてきたものすべてが俺とは違う男。
女を惹きつけそうな甘い顔立ちも、歪みのなさそうな性格も、おそらくは高収入で高学歴で、今もこれから先の未来も、俺の持っていないものをまとめて手にしている男だ。
自分勝手な僻みと劣等感とイラ立ちがいい感じに混ざり合って、ぽたんと心に黒い染みをつくる。
じわじわと、その毒が濃くなり全身に広がっていく。