死神キューピッド
俺は、あんたが一生知ることのないであろう、日陰の人生を送ってんだよ。


なんでこんな奴に、ひた隠しにしてきた事情を暴かれて、こんな場所でそんなことを知らされなきゃなんねえんだよ……。


こんな、すべてを持ってるような奴に、なにがわかんだよ……。


「……伝言、聞かなかったことにしていいっすか。今更、そんなこと言われてもって感じなんで」


あえて冷静を装って、笑顔をつくる。


せめて、体裁繕わせろ。


こんな奴に動揺させられてたまるか。


無神経に、ひとの家の事情に立ち入らせはしない。


背中を向けて、足を踏み出すと、かすれた声が耳に届く。


「じゃ、行かなきゃいいだろ。知るかよ、そんなの」


……は? 


信じられない思いで振り返る。


「あ、あんたが! あんたが、勝手に人の仕事場に来て、勝手なことをほざいたんだろ⁈」


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