死神キューピッド
「入学式の日に、柚が満開の桜を見上げて嬉しそうに笑った横顔とか、寒い冬の日にマフラーに顔半分うずめて幸せそうにしてた姿とか。体育の授業で、ほっぺたを真っ赤にしてマラソンしてたこととか。同じクラスになる前の柚のこと、俺は今でも覚えてるよ」


……全然、知らなかった。


5年も一緒にいたのに。


「東王子のことを蹴落として実行委員に名乗り出て、実はずっと柚のことが好きでした、なんて、さすがにダサすぎて言えなかった。……あの文化祭で、俺は柚のことを全力で落としにかかったんだよ」



驚きすぎて、ぱくぱくと口を動かすことしかできない私は、酸素を求める金魚鉢のなかの金魚みたい。


だ、だって、そんなこと、考えたこともなかった。


「ずっと黙っててごめんな」


虹太はいたずらっ子みたいな顔をして笑ってるけど。


びっくりしすぎて、声にならない。


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