死神キューピッド
今でも鮮やかによみがえる、雨の日の放課後。


文化祭も終わり、人のいなくなった教室で、虹太とふたりで会計報告書とか、備品のチェック表とか、そういう細々とした書類を記入してチェックしていた。


「これで、文化祭実行委員の仕事は、終わりだね」


そう言って顔をあげた私に、虹太はいきなり、キスをした。


驚きすぎて固まる私に、


「俺と、つきあってほしい」


そう虹太が告げた。


「……」


なにが起こったのか、理解できないでいると、虹太がさーっと青ざめた。


「って、俺、なにしてんだ⁈」


青ざめたと思ったら、あっという間に耳まで真っ赤にして頭を抱える虹太に、


「好きです」


そう伝えたのは私だった。


あの日は、優しい雨が降っていて、すべての書類を提出し終えると、ひとつの傘でふたりで帰った。


「懐かしいね」


「ん。……なんか、俺、必死過ぎて、今更だけど、猛烈に恥ずかしい……」


「びっくりしたけど、嬉しかったよ、すごく」


「可愛かったよ、あのときの柚」


淡い記憶をたどるように、そっと唇を重ねあう。


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