死神キューピッド
あっという間に、重力に導かれ、ガキの身体もろとも、その入院患者が落下した。
ちょっ……、えっ?
……うそだろ。
ハッと立ち上がったときには、すべてが事後のこと。
深紅の花がぐしゃりと歪に咲き誇るように、つい数十秒前まで踊り場にいた入院患者らしき、若い女の頭が割れていた。
その腕のなかにいるのは、ミントグリーンのパーカーを着たあのガキだ。
手すりを乗り越えようとしたガキに手を伸ばした入院患者が、そのガキに引きずられ落下したのだと理解するのに、しばらく時間が必要だった。
動けない。
足が、動かない。
凍り付いた時間を溶かしたのは、息絶えているだろう若い女の腕のなかで無邪気に蠢く、小さな生き物。
目に鮮やかな、ミントグリーンのパーカー。
少しはなれた場所で、俺のポケットに入っていた風船がふうわりと風に舞っている。
ちょっ……、えっ?
……うそだろ。
ハッと立ち上がったときには、すべてが事後のこと。
深紅の花がぐしゃりと歪に咲き誇るように、つい数十秒前まで踊り場にいた入院患者らしき、若い女の頭が割れていた。
その腕のなかにいるのは、ミントグリーンのパーカーを着たあのガキだ。
手すりを乗り越えようとしたガキに手を伸ばした入院患者が、そのガキに引きずられ落下したのだと理解するのに、しばらく時間が必要だった。
動けない。
足が、動かない。
凍り付いた時間を溶かしたのは、息絶えているだろう若い女の腕のなかで無邪気に蠢く、小さな生き物。
目に鮮やかな、ミントグリーンのパーカー。
少しはなれた場所で、俺のポケットに入っていた風船がふうわりと風に舞っている。