死神キューピッド
カチリと、理解する。
俺が渡した風船の、せいか……?
コンクリートにじわりと広がる深紅のなかで、もぞもぞと、ガキが動く。
マジか……
すぐにそのガキに駆け寄ると、胸に抱きかかえ、あたりに散らばる肉片から幼い瞳を遠ざけた。
ぱらぱらと、人がやってくる。
切り裂くような悲鳴に、ざわめき、怒号、叫喚。
半狂乱で駆けつける若い母親。
耳を突く鋭利な叫び声。
スマホを向けるたくさんの腕、好奇の目。
遠くで響くパトカーのサイレン。
ひらめく白衣、広げられるブルーシート。
人、人、人。
呆然としていると、遠くの空に虹がかかった。
なんだ、これ。
……夢、か?
泣きわめくそのガキを若い母親に渡していると、強い視線を感じてゆっくりと振りかえる。
押し寄せる人の群れの向こうに、じっとこっちを見つめている男がいた。
コンビニにやってきた、あの不気味な若い男だ。