絶叫、そして契り/『ヒート・フルーツ』第1部終盤エピソード特別編集版❣
前段の風景
その1
麻衣
珍しいなあ…
極道界でその名も轟く”撲殺”さんが食事に誘ってくれるなんてさー(苦笑)
ということで、今、倉橋さん行きつけの焼肉屋さんに着いた
...
私たち二人は、奥の個室に案内されてね
鉄板を挟んで腰を下ろし、ポロシャツ姿の彼と向き合った
「今日はどうしたんですか?私、誕生日でもないですよ」
「はは…、まあ、頭の包帯も取れた訳だし、一区切りついたんだ。ご苦労さん会ってことでやろうや」
二人でご苦労さん会か…
ふふっ…、そうね
このタイミングで倉橋さんとはこういうリラックスした場で、二人っきりで過ごすのもいいわね
...
ラフな格好でサングラスを外した倉橋さんとは、取り留めのない会話でお互いケタケタ笑ってさ…
何て楽しいひと時なんだろうか…
「さあ、遠慮なくどんどん食ってくれ。ここで精をつけとかないとさ…」
倉橋さん、ひょっとして…
私は意識してモードチェンジを彼に計ってみた
目でね…
「…昨日、剣崎さんからはいろいろ聞いたよ。会長が見初めた二人目の子…、ああ、名前はケイコちゃんだったかな…。彼女と麻衣ちゃんの今後のまあ、扱いというか…、方針をね」
そうか…、剣崎さんとは、もうそういう話をしてたのね
...
「へー、会長さんがそんなことをね…。でも私、嬉しいわ。これからも倉橋さんがそばについててくれるんなら。引き続き、よろしくお願いしますね」
私はハシをおいて、ペコンと頭を下げた
「ハハハ…。剣崎さんは麻衣ちゃんがまた何しでかすかわからないから、君には俺しかってことだ。あっちの子には能勢がメインで着くことになるよ」
「ああ、能勢さんなら適任だわ。横田って子、ハンパない奴だけど、普段は礼儀正しくて真面目だから」
「真面目か…」
やっぱり、この人もそんな子がなぜ?…ってとこなんだろう
当然よね
...
「…それで、骨折させた南玉連合のトップの子とはいつなんだい?」
うーん、倉橋さん、やっぱ今日はこの件か…
こってり焼いたカルビを口にほお張りながらだったから表情はうかがえなかったけど、微妙に最初と口調も変わってたし…
「明後日、行ってきます」
「そうか…」
ここで倉橋さんは顔を上げ、ちょっと意味ありげな目つきで、しばらく私を見つめてた…
...
「倉橋さん…、ひょっとして、私のこと心配してくれちゃってるんですか~?」
私は肘をテーブルに乗せ、両手を組んだ上に顎を置いて、やや身を乗り出して言ったわ
ちょっといたずらっぽい顔してね
倉橋さんは少し笑いをこぼして、その後ジョッキの中の生ビールを一気に飲み干した
そして…
...
「いや~、なんてうまいんだ。麻衣ちゃんとの会話は楽しいし、今日は湿っぽい話はよそうと思ってるんだけどな…」
倉橋さん…
私…、咄嗟にいたずらっぽい顔やめちゃってたと思う
「…なあ、あまり無理するなよ」
この人が何を言いたいのかは、わかってる
じっと私を見てる目、とても優しいって…
でもなあ…
業界で恐れられた撲殺人がこんな表情…、やっぱ、似合わないや(苦笑)
...
「…会長さんからは、そういう言葉なかったわ。無論、あの人も私がこの後、どうするかはわかってる。あなたとおんなじことを思ってる。でも、相馬豹一はそういうこと、口にしない…」
「俺は相馬豹一じゃないからな…。素直に思ったことを口にしたまでだ」
「倉橋さん…」
「よし…!もうやめよう。すまなかった。これからまた、大変な舞台を踏む覚悟の君に、迷いを与えるようなこと言っちまって…」
「ううん。正直な気持ちとしては嬉しいし、その思いやりに感謝してるわ。まあ、どの程度の無理になるかは出たとこでって感じだけど、要は体力勝負だから、今夜はお肉いっぱいいただくわ」
「おお、たっぷりどうぞだ!ハハハ…」
二人は再び、笑い声が飛び交う明るい会話に戻ったわ
まあ一応、明後日は”仲間”3人が遠巻きに着いてくれることを言っといた
そしたら…、かなり安心した様子だったわ、撲殺人さん(苦笑)
…
でもね、実のところ、私のホントの決心が定まったのは5日前なんだよな
今回の再編闘争を終え、言わば我々サイドの主だったメンバーが顔を揃え、今後の指針を確かめ合ってね
その席で、私は南玉連合に土下座してでも復帰を懇願するつもりだと正直に宣言したわ
半ば承知していた”仲間”達は、まあ、あきれ顔で苦笑していた
で…!
そのためには、あの火の玉川原決戦の夜、相和会を使って拉致監禁し、左脚の骨を金属バットで折った、”赤い狂犬”こと合田荒子総長へのケジメが不可欠ってことでね
みんなは反対したわよ
そりゃそうよね~
あの狂犬への詫び入れとならば、どんな壮絶極まる仕打ちを受けるか…
まあ、私だってね…
んで、その集まりの後、岩本真樹子、三田村峰子という私の誇る2大ブレーンとのミーティングは持たれたのよ
麻衣
珍しいなあ…
極道界でその名も轟く”撲殺”さんが食事に誘ってくれるなんてさー(苦笑)
ということで、今、倉橋さん行きつけの焼肉屋さんに着いた
...
私たち二人は、奥の個室に案内されてね
鉄板を挟んで腰を下ろし、ポロシャツ姿の彼と向き合った
「今日はどうしたんですか?私、誕生日でもないですよ」
「はは…、まあ、頭の包帯も取れた訳だし、一区切りついたんだ。ご苦労さん会ってことでやろうや」
二人でご苦労さん会か…
ふふっ…、そうね
このタイミングで倉橋さんとはこういうリラックスした場で、二人っきりで過ごすのもいいわね
...
ラフな格好でサングラスを外した倉橋さんとは、取り留めのない会話でお互いケタケタ笑ってさ…
何て楽しいひと時なんだろうか…
「さあ、遠慮なくどんどん食ってくれ。ここで精をつけとかないとさ…」
倉橋さん、ひょっとして…
私は意識してモードチェンジを彼に計ってみた
目でね…
「…昨日、剣崎さんからはいろいろ聞いたよ。会長が見初めた二人目の子…、ああ、名前はケイコちゃんだったかな…。彼女と麻衣ちゃんの今後のまあ、扱いというか…、方針をね」
そうか…、剣崎さんとは、もうそういう話をしてたのね
...
「へー、会長さんがそんなことをね…。でも私、嬉しいわ。これからも倉橋さんがそばについててくれるんなら。引き続き、よろしくお願いしますね」
私はハシをおいて、ペコンと頭を下げた
「ハハハ…。剣崎さんは麻衣ちゃんがまた何しでかすかわからないから、君には俺しかってことだ。あっちの子には能勢がメインで着くことになるよ」
「ああ、能勢さんなら適任だわ。横田って子、ハンパない奴だけど、普段は礼儀正しくて真面目だから」
「真面目か…」
やっぱり、この人もそんな子がなぜ?…ってとこなんだろう
当然よね
...
「…それで、骨折させた南玉連合のトップの子とはいつなんだい?」
うーん、倉橋さん、やっぱ今日はこの件か…
こってり焼いたカルビを口にほお張りながらだったから表情はうかがえなかったけど、微妙に最初と口調も変わってたし…
「明後日、行ってきます」
「そうか…」
ここで倉橋さんは顔を上げ、ちょっと意味ありげな目つきで、しばらく私を見つめてた…
...
「倉橋さん…、ひょっとして、私のこと心配してくれちゃってるんですか~?」
私は肘をテーブルに乗せ、両手を組んだ上に顎を置いて、やや身を乗り出して言ったわ
ちょっといたずらっぽい顔してね
倉橋さんは少し笑いをこぼして、その後ジョッキの中の生ビールを一気に飲み干した
そして…
...
「いや~、なんてうまいんだ。麻衣ちゃんとの会話は楽しいし、今日は湿っぽい話はよそうと思ってるんだけどな…」
倉橋さん…
私…、咄嗟にいたずらっぽい顔やめちゃってたと思う
「…なあ、あまり無理するなよ」
この人が何を言いたいのかは、わかってる
じっと私を見てる目、とても優しいって…
でもなあ…
業界で恐れられた撲殺人がこんな表情…、やっぱ、似合わないや(苦笑)
...
「…会長さんからは、そういう言葉なかったわ。無論、あの人も私がこの後、どうするかはわかってる。あなたとおんなじことを思ってる。でも、相馬豹一はそういうこと、口にしない…」
「俺は相馬豹一じゃないからな…。素直に思ったことを口にしたまでだ」
「倉橋さん…」
「よし…!もうやめよう。すまなかった。これからまた、大変な舞台を踏む覚悟の君に、迷いを与えるようなこと言っちまって…」
「ううん。正直な気持ちとしては嬉しいし、その思いやりに感謝してるわ。まあ、どの程度の無理になるかは出たとこでって感じだけど、要は体力勝負だから、今夜はお肉いっぱいいただくわ」
「おお、たっぷりどうぞだ!ハハハ…」
二人は再び、笑い声が飛び交う明るい会話に戻ったわ
まあ一応、明後日は”仲間”3人が遠巻きに着いてくれることを言っといた
そしたら…、かなり安心した様子だったわ、撲殺人さん(苦笑)
…
でもね、実のところ、私のホントの決心が定まったのは5日前なんだよな
今回の再編闘争を終え、言わば我々サイドの主だったメンバーが顔を揃え、今後の指針を確かめ合ってね
その席で、私は南玉連合に土下座してでも復帰を懇願するつもりだと正直に宣言したわ
半ば承知していた”仲間”達は、まあ、あきれ顔で苦笑していた
で…!
そのためには、あの火の玉川原決戦の夜、相和会を使って拉致監禁し、左脚の骨を金属バットで折った、”赤い狂犬”こと合田荒子総長へのケジメが不可欠ってことでね
みんなは反対したわよ
そりゃそうよね~
あの狂犬への詫び入れとならば、どんな壮絶極まる仕打ちを受けるか…
まあ、私だってね…
んで、その集まりの後、岩本真樹子、三田村峰子という私の誇る2大ブレーンとのミーティングは持たれたのよ
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