絶叫、そして契り/『ヒート・フルーツ』第1部終盤エピソード特別編集版❣
その11
麻衣



「…麻衣!!大丈夫?」

「麻衣さん!麻衣さん…!!」

「麻衣…、今、大黒病院に向かってるからね。辛抱するんだよ。…あんたたち、麻衣のこの姿、しっかり目に焼き付けなさい!」

「はい…」

私の時間は、今だ激痛に支配され続けている

だが、仲間たちの声はしっかり耳に届いていた

心にも…


...


病院に着いて手当をしてもらったあとは、だいぶ落ち着いた

今のところ激痛は若干収まって、少しづつ頭の中でも整理がついてきた

私は一階の待合の長椅子で横になってた

アンコウ先輩は車でここまで私を搬送してくれた後、久美と静美を送りかえして、その後また戻ってきてくれるらしい

左手に巻かれた包帯の上から右手を添え、目をつぶって仰向けになってると、私を呼ぶ声があった

「麻衣…!」

「祥子、真樹子さん!」

二人が駆け付けてくれたわ


...


「麻衣さん…、やったのね、あなた…!えらいわ、ホント立派よ」

真樹子さん、私の前に来るなり早くも涙流しちゃってくれてる…

「とうとうやり遂げたなあ、お前。スゲーよ、ハハハ…」

祥子の方は…、豪快に笑ってくれてる(苦笑)

ここで私は体を起こしてね

私は、痛みは我慢できる程度で落ち着いてるからと二人に告げ、さあ、話を始めるぞ

...


「…左手の小指一本でチャラにしてもらっちゃったよ。でもさ、つりあい取れないでしょ、これじゃあ…。何かそこがね…」

「何言ってんのよ!小指だろうが骨一本には変わりなんだから、いいんだって」

「狂犬も同じこと言ってた。一本は一本だって」

「ハハハ…、麻衣、赤い狂犬に”一本”取られたなー」

アハハハ…

みんな、病院だってのに爆笑だ

そこへアンコウが戻って来たわ


...


「ああ、お待たせ」

「先輩、すいませんでしたね。今日は感謝してます」

「いいって。で…、どうだい、痛みの方はさ」

「今はさっきほどまでの激痛は収まってますよ。ですから、揃ったんで始めましょう。病院にはここで話すの、了解してもらってるんで」

ここの病院は大黒病院という、相和会がよく使う、言わばモグリに近い”融通の利く”、その筋には”御用達”らしい

「…あれ、久美と静美は?」

「真樹子さん、二人は帰しました。今日はショックを受けたでしょうからね。この4人で進めましょう」

「そう…。じゃあ、今日のところはね」

さあ、私にとっての狂犬への決着がついたからには、次だ…





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