モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 胸に生まれた騒めきがなかなか収まらなかった。

「ベアトリス、出発までの間、近くを見て回らない? 向こうには綺麗な泉があるんですって」
「あ、うん……」

 カロリーネに誘われてベアトリスは村の中を見て回る。

「深淵の森って魔獣が出るし名前のせいか少し怖い印象があったけど、この村はのんびりした雰囲気で影響を受けていなそうね」
「うん、そうだね」

 カロリーネの言葉にうなずきながらも、頭の中では先ほどのユリアンの言葉が何度も蘇っていた。

(『俺が君を危険な目には遭わせない』って言ってたよね)

 まるで普通の婚約者同士の会話のようだった。

 ユリアンとベアトリスの間柄では決してないであろうセリフ。

(……きっと私を安心させるために大げさに言ったんだよね? 婚約者としての義務だわ。それに今は聖女様捜しに協力しているから気を使っているのよ。でも……)

 あのとき、心から心配してくれているように感じたのだ。

(そんなことがあるはずないか。ユリアン王太子は私を嫌っているんだから……でもそれならあの態度はなんだったのかな)

 考えてもユリアンの胸中など分かるはずがないが、怖いとばかり思っていた彼の優しい一面を見て、ベアトリスは動揺していた。

(そういえば、あのとき〝俺〟って言ってたよね。あんな言葉遣いをするなんて意外だった。印象が違う感じがするのはそのせいもあるのかも)
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