モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
「はい。そのショックで気を失ったみたいです。王太子殿下は大丈夫ですか?」

「ああ。だがここがどこなのかはわからない」

 ユリアンは深刻そうに目を細めた。ベアトリスは再び周囲を見回す。

「手がかりになりそうなものがないですね」

 視界の先にはどこまでも鬱蒼とした森が続いている。

「森の中にはいざというときのために教師が配置されているんですよね?」

 ユリアンは残念そうに首を横に振ってみせた。

「この状況は想定外で危険を伴うものだ。近くにいたらすでに駆けつけているだろう」
「……では自力で脱出するしかないですね。出口はどの方向なんでしょうか」

 先ほどまでは地図を見て進んでいたが、現在地も方位磁石もない今、途方に暮れる。

 困惑しているとユリアンが絶望的な発言をした。

「ここが深淵の森の中とは限らない」
「ええっ?」

 ベアトリスは大きく目を見開く。

「大魔導士レベルになると国境を越えるほどの距離の移動が可能になる」
「そ、そんな……」
「転移の際に感じた魔力はクロイツァー公爵令嬢が魔力酔いをするほどのものだった。相当な力が込められていたはずだ」

 そういえば学院から深淵の森の近くまで飛んだときは問題なかった。ということは、それ以上の距離を転移した可能性が高くなる。

「どうすればいいんでしょうか」

 ベアトリスは不安のあまり肩を落としてつぶやいた。
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