モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
「お母様ありがとうございます。今日は少し早めに出て学院長に話を聞きたいと思います」

 ベアトリスはすばやく食事を済ませると、レオを始めとした護衛とともに学院に向かった。

 しかし残念ながら学院長には会えなかった。父たちと同様に、学院長も王宮からの呼び出しを受けて不在にしていたのだ。
 仕方がなく教室に行くと、生徒たちの様子がいつもと違うことに気がついた。

 多くの者が落ち着きがなく、動揺しているように見える。

(なにがあったのかしら)

 疑問に思いながら席に着く。

 ユリアンと側近ふたりはまだ来ていない。ツェザールは最近なぜか休みがちだから不在でもおかしくないが、いつも早めに到着しているユリアンとゲオルグがいないことには違和感がある。

「様子がおかしいけど、なにかあったの?」

 ベアトリスはこっそりとカロリーネに声をかける。

 カロリーネは無言ながら目線で肯定した。それからベアトリスに体を寄せて距離をなくす。

「一部の生徒の精霊の様子がおかしいそうなの」

 周りに聞かれないようにしているのだろう。カロリーネの声はささやくような小さなものだったが、ベアトリスは思わず「えっ?」と高い声をあげてしまった。

 カロリーネの顔にも驚きが浮かぶ。ベアトリスはキョロキョロと周囲の様子を確かめたが、幸いほかの生徒も混乱中のようでベアトリスの大声に気づいた者はいなかった。
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