モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 舞台に近い席にはきっとユリアンが座るだろうから出来る限り離れて、接触しないようにしたい。

 ここで待機して、自分の番になったら、舞台に向かえばいいのだろうか。

 今日の段取りはきっと事前に説明を受けているのだろうが、ざっくりした記憶しかないと、わからないことが多すぎて不便だ。

 ため息をこぼしたとき、急に手もとに影が差した。

 何事かとうつむいていた顔を上げたベアトリスは、そこに怖い顔をしたユリアンがいるのを見て飛び上がらんばかりに驚いた。

「お、王太子殿下?」

(どうしてここに? ていうかいつの間に現れたの!?)

「クロイツァー公爵令嬢、ここでなにをしているんだ?」

 それはこちらのセリフだけれど、そんなことを言えるはずもない。

「儀式が始まるのを待っているのですが」

 おかしな発言をしたつもりはないのに、ユリアンは「はあ」と重いため息をついた。

「先ほどの一件で機嫌を損ねたのか? だからといってほかの者に迷惑をかけるな」
「迷惑?」

 いったいなんのことかとオウム返しにしたら、ユリアンはますます機嫌を悪くしてしまったようだ。

「とにかく自分の席に座るんだ」
「自分の席?」

 指定席だったのかと驚いたそのとき、ユリアンの背後に気の弱そうな男子生徒の姿を見つけた。

 ベアトリスがじっと見たため、視線が重なる。すると彼は大慌てで目を逸らした。

(もしかしてこの席って……)
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