モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 スラニナ大司教がベアトリスの肩を乱暴に押す。さらに階段を下りて神木のすぐそばへ向かえと言うのだ。

「こんなことをして、あなたは無事で済むと思ってるの?」
「ええ、もちろん」
「私が誰かに話したらどうするの?」

 スラニナ大司教は冷酷な笑みを浮かべた。

「ご心配なく。手は打ってありますよ」

 ベアトリスは体中震えるような寒気に襲われた。彼がベアトリスを家に帰すつもりがないと気づいたからだ。

(以前のように私を殺す気なの?)

 しかし平民で肉親がいなかったロゼと違い、今のベアトリスは公爵令嬢だ。しかも王太子の婚約者。それでも消せるというのだろうか。

 そのときはっと気がつき、おそるおそるツェザールを見た。彼は無念さを滲ませ、握った拳からはポタポタと血が滲んでいた。

(すべてツェザール様のせいにして、私を消すつもりだわ)

 だが気づいたところでどうしようもない。神木に魔力を与えるのを拒否したら、もっと残虐な方法で言うことを聞かせるつもりだろう。

 だからといって、言いなりになるわけにはいかない。

「断ります」

 もし神木を癒す力が本当にあるのだとしても、スラニナ大司教の思惑通りにはさせない。彼は罪人として捕らえて処罰しなくては。

(そうじゃなかったらレネもロゼも報われない)

「少し痛い目を見ないとわからないようですね」
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