モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 スラニナ大司教が片手を振り上げる。魔力が集まる気配を感じ、ベアトリスは身をこわばらせて目を閉じた。

 しかし衝撃は襲ってきたものの、痛みはない。

 こわごわ目を開けると、ベアトリスの前には血だらけのツェザールが立ちふさがっていた。

「ツェザール様?」

 まさか彼がベアトリスをかばうなんて。

「くそ……まさかこんなことになるとは」

 ツェザールが苦しげに言う。

 そんな様子を見てスラニナ大司教は酷薄に笑った。

「かばっても無駄ですよ。私は魔法を無限に放てますが、あなたの体は持たないでしょう」

 ツェザールが無念そうにうなだれる。

「さあ、ベアトリス嬢、この男を殺されたくなかったら、私にしたがってもらいましょう」


 ベアトリスはゆっくりと階段を下りた。神木に着くまでに現状を打開する策を考えつかなくては。だけどなにも浮かばない。刻一刻と神木が近づいているというのに。

 自分に魔力があるとはいまだ信じられないが、万が一なにか作用してしまったら、とんでもないことが起きるかもしれない。
 レネが横たわる台座の目の前に来た。

 間近で見た彼女は、思い出と少しも変わらない姿で目を閉じていた。

(今レネが目覚めてくれたら……)

 正しい方法で神木を蘇らせることが出来るのに。

 でもスラニナ大司教を排除できないこの状況で目覚めたら、レネはきっと不幸になる。
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