モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 どうすることも出来ない無力さに打ちひしがれて、ベアトリスは心が折れそうだ。

(誰かが助けに来てくれたら……)

 ツェザールはユリアンにすら言わずに行動した。レオたちに期待がかかるが、彼らが無事という保証もない。
 絶望が心を覆っていく。

「ベアトリス嬢、早くしなさい」

 スラニナ大司教の声が背中を押してくる。

 それでも動けないでいると、彼の手が銀色に光る。

 彼はその手をベアトリスに向けて突き出した。

(また魔法で攻撃する気? ここにはレネだっているのに)

 あぜんとしている間に、刃が襲ってくる。

 とっさにレネを庇い立ちふさがる。

 そのとき、フワリと空気が揺れてベアトリスの周りに炎が立ち上った。

「え……これは?」

 炎はまるで守るようにベアトリスを囲っている。スラニナ大司教の攻撃は炎に阻まれて届かない。

(いったいどうして? あ……)

 ベアトリスの胸もとが赤く輝いていた。

(いつかお兄様がくれたアミュレット……これが私を守ってくれたんだわ)

 クロイツァー公爵家の紋章が刻まれたそれは、強い力でベアトリスを守っていた。

 ほっとしたが、この守護がいつまで続くかわからない。

 早く助かる方法を考えなくては、焦りながら必死に思考を巡らせていたとき、ふいに空気の流れが変わった気がした。炎の結界が消えていく。

「あ、あなたは!」
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