モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 ベアトリスは喜び弾んだ声を出す。ところがどこか様子がおかしい。

「ピピ? どうしたの?」

 問いかけるとピピは突然勢いよく上空に向かった。これほど高く飛ぶピピを見るのは初めてであぜんとする。

「なにをしようとしているんだ?」

 ユリアンも戸惑いを見せる。

 ピピは上空に円を描くように飛んでいた。そのとき、小さな体から眩い光があふれて辺りは金色に包まれた。

 とっさに目をつむったベアトリスだが、おそるおそる目を開いた瞬間、大きく目を見開いた。神木の上空には炎を纏った美しい鳥の姿があったのだ。

 神々しいその姿にごくりと息をのむ。

「あ、あれはなに? ピピはどこなの?」

 もしやあの鳥の出現で吹き飛ばされてしまったのか。

「危ない!」

 突然ユリアンがベアトリスの体をぐっと引き寄せ、自分の腕で包み込んだ。その直後、鳥から炎が舞い上がり、神木を包み込む。

「神木が!」

 ユリアンの腕の中でベアトリスが叫ぶ。もう終わりだ。あれほどの勢いで炎が回ったらユリアンの氷でも消せないだろう。目の前が真っ暗になり絶望が襲ってくる。

「待て、あれは!」

 ユリアンが驚愕の声をあげた。ベアトリスも小さく声をあげる。

「黒い靄が消えていく」

 まるで炎の鳥が浄化しているかのように、神木を苛んでいたすすのようなものが蒸発していく。

 後に残ったのは、みずみずしい葉を広げる雄大な大樹だった。
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