モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
「いったいどうなっているの?」

 ベアトリスはぼうぜんとつぶやく。

「見ろ、炎の鳥が消える」
「え?」

 見上げると、両翼を広げていた鳥がどんどん小さくなっていく。

 同時にフワリフワリと風に漂うように下降し始める。

 ベアトリスは信じられない光景に息をするのも忘れて見入った。

 ユリアンとベアトリスの前まで降りてきた鳥は、ピピの姿になっていたからだ。

「まさか、ピピがあの鳥になったの?」

 かわいい小鳥の姿になったピピに問いかける。いつも通りちょっと間抜けな表情をしたピピは「きゅ」と鳴き首をかしげる。

「信じられない!」

 さっきまでの神々しい姿の面影がまったくないではないか。

「再生の炎……スラニナ大司教が言っていたベアトリスの力とは、このことだったんだな」

 ユリアンが確信したようにつぶやく。

「どうしてスラニナ大司教がピピの力を知っていたのでしょうか。私だって知らなかったのに」
「召喚式はフィークス教団のコスタ司教が行った。ベアトリスの召喚した精霊は前例がないもので注目を浴びていたから神殿側で調べたのだろう」
「なぜ私があんなにも強大な力を持つ精霊を召喚出来たのかが謎ですね」

 クロイツァー公爵家が代々強大な炎の力を持つ家系だからだろうか。

(ピピは炎の神鳥のようだったものね)

「でも、こんなにすごい力でも、レネを目覚めさせるのは無理だったなんて……」
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