モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
「もう大丈夫だよ。あの人たちはもういないの。これからは怖いことはなにもないんだから」
「……本当に? ロゼはもう怖くないの?」
「もちろん。今は私たちを助けてくれる人がたくさんいるの。それにレネもお祈りしてくれたんでしょう? 私を守ってくださいって」

 スラニナ大司教が言っていた言葉を思い出した。

『名もない平民の娘におおいなる祝福を与え無駄に力を使った』

 あれはたぶんロゼのことだ。最期のとき、ロゼにすがるレネが発した清らかな光に包まれた記憶がある。

「私お願いしたの。ロゼを死なせないでくださいって。幸せになろうって約束を守れるようにしてほしいって」

 ロゼは泣きじゃくるレネの背中を優しくなでながら、ああそうだったのかと腑に落ちる思いだった。

(私に前世の記憶があるのは、聖女様の祝福のおかげなのね)

 死なせないでくださいというお願いは届かなかったが、ロゼの魂は転生という形で蘇ったのだ。

(以前の私が異常に貪欲だったのも、約束を守ろうとする聖女様の意志? ケーキを食べたいとか、綺麗な服を着たいとかたくさん話したものね……でもそれはないか)

 さすがにその解釈は都合がよすぎる。単に生まれ持った性格だろう。

 ベアトリスはくすりと笑った。

「約束は守られたよ。だからこれからはもっと幸せになろうね」

 レネはベアトリスの胸で泣き続ける。それは喜びの涙でもあった。

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