モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 その後、王家の近衛騎士団が到着して、ドラーク枢機卿とスラニナ大司教を捕らえ連行した。

「聖女は眠ってしまったようだな」

 ベアトリスの腕の中ですやすや眠るレネを見て、ユリアンが小さな声で言う。

「はい。きっと安心したのでしょう」
「……聖女は二十六歳のはずだが、完全に時を止めていたのだな」
「信じられないけど、そうみたいです。スラニナ大司教の話では自ら眠りについたようです。その間はなぜか時が止まるのでしょうね」

 レネはどう見ても記憶の頃と変わらない幼子だ。

「聖女を王妃にと言いだす者は激減するだろうな」
「そうですね」

 十九歳と六歳。絶対にないとは言えない年齢差だが、レネがユリアンの妃だなんて想像出来ない。

「聖女が年相応の大人だったとしても、俺の妃はベアトリスしか考えられないが」

 ユリアンがベアトリスの肩を抱く。

「ユリアン様……」
「今まで大変な苦労をしただろう。だがこれからは、俺が君を守り支えたい。どうかともに生きることを許してくれないか?」

 真摯な眼差しにベアトリスの心が大きく揺れた。

 それは次第に喜びに変わっていき、頬が熱を持つ。

 初めは怖くて仕方なかった。関わりたくないと思っていた。

 けれど、彼の優しさと強さを知るうちに、気づけば好きになっていた。

 今でもまだ自分が王太子妃にふさわしいとは思わないが、努力したいと思う。
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