モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
「はい。私もユリアン様とともに生きていきたいです」

 ベアトリスの勇気を込めた返事に、ユリアンは破顔する。

 大きな手が優しくベアトリスの頬に触れて、ユリアンから視線を逸らせないようにする。

 彼の美しい瞳に魅入られて、場所も状況も忘れてしまいそうだった。

 ふたりの距離が近づいていく、そのとき。

「ユリアン!」

 厳しい声が、甘さと緊張をはらんだ空気を霧散させるように割り込んできた。

 ユリアンはぴたりと動きを止めて、あからさまにため息をつく。

「……ゲオルグ、どうした」

「抵抗する者はすべて制圧した。大司教の魔法によるツェザールの状態異常も解除出来た」
「わかった」
「聖女を連れて王宮に帰ろう。陛下に報告と今後について話し合わなくてはならない」

 ユリアンはあきらめたようにベアトリスから手を離す。

「聖女は俺とベアトリスが連れていく。ツェザールは通常の規則通り連行しろ」
「ああ……だがユリアン。ドラーク枢機卿たちの企みを暴けたのはツェザールの動きによるものが多い。しっかり考慮してくれ」
「そうだな。だが結果としてうまくいっただけで、独断でベアトリスを危険な目に遭わせる判断をしたのは許せない。無罪放免にはならない」

 ゲオルグは立ち去る前にベアトリスに目を向け会釈をしてから、足早に近衛騎士たちの方に去っていった。

「ツェザール様の行動はユリアン様の指示ではなかったのですか?」
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