モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 動揺のあまり、ついといった様子でつぶやいたブランシュ院長は、直後はっとしたように腰を折った。

「無礼な発言申し訳ありません」
「いえ、気にしないでくださいね」

 社会勉強を兼ねて市井の様子を見て回る貴族はわりと多い中、孤児院へと見学に来ただけでここまで驚かれるとは。ベアトリスが悪女であるという噂はここまで広がっているということだろうか。だとしたら彼が慌てているのもうなずける。

 サフィとレオも同じ感想のようで、ブランシュ院長に文句を言う様子はない。

「け、見学でございますね。私がご案内させていただいてよろしいでしょうか」
「はい、お願いします」

 ブランシュ院長の後について、玄関扉をくぐる。サフィとレオは無言でついてきているが、きっとなぜベアトリスが孤児院に関心を持ったのか不思議に思っている。後で追及されそうだ。

「こちらが子どもたちが食事をとる食堂です」

 ブランシュ院長が開いた扉の先には、子どもなら十人以上は座れそうな長い机が四脚。その周りに背もたれのない丸い椅子が並んでいる。

 机も椅子もかなり古い。

(私がいた頃と同じものだわ)

 とても懐かしいがロゼがいたのは二十年以上前なので、もうガタが来ているはずだ。

 部屋の様子をよく見ると壁は一部崩れているし、床にはところどころに染みがある。おそらく雨漏りの跡だろう。
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