モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
公爵邸の応接間で、ベアトリスは顔を真っ赤にしてブルブル体を震わせていた。
少し離れたところに、騎士服姿の男性が佇んでいる。
『そんな……エスコートが出来ないってどういうことよ!』
ベアトリスが感情を爆発させるように叫び、テーブルの上の高そうな白磁のカップを掴(つか)むと、壁に向かって放り投げた。
カップは耳障りな音を立てて割れ、白い壁には紅茶色の染みが飛び散った。
貴族令嬢とは思えない発狂[R7]ぶり。騎士はなにも言わないものの、あきらかに軽蔑の表情を浮かべている。
『トリスちゃん、落ち着きなさい』
同席していた母がなだめても、ベアトリスは聞き入れようとしない。
『いやよ! どうして私がこんな屈辱を受けないといけないの? お父様に言いつけてやるわ!』
もうひとつのカップにベアトリスが手を伸ばそうとしたため、侍女が慌てて止めに入った。
『お嬢様、どうかおやめください!』
『うるさい! 私に逆らったら許さないから!』
ついには侍女たちにまであたり始める。母の目配せで騎士が退室したことにさらに怒り、鎮まる気配はなく――。
(あ、ありえない[野島8]。もしかしなくても、私ってとんでもない性格だったんじゃない!?)
思い出した事実はあまりに衝撃的で、ベアトリスはうなだれて頭をかかえた。
昨日までのベアトリスは、情緒になにか問題があったのかもしれない。いくらショックなことがあったのだとしても興奮しすぎだし、人の迷惑というものを少しも考えていない。