モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
「トリス、どうしたんだ?」
普段とは違う娘の様子がいよいよ心配になったのか、父までもが立ち上がりベアトリスに近づいてくる。
「あ、なんでもありません、大丈夫です」
なんとか微笑んでみたものの、うまくいっているかは自信がない。父はそんなベアトリスの顔を見て、痛ましげに眉を下げた。
「王太子殿下の態度でトリスが落ち込む気持ちはよくわかるが、今日の召喚式は魔力を持つ者の義務だ。つらいだろうが絶えなければならないよ」
(召喚式ってなんだっけ?)
首をかしげたくなったが、今は余計な発言をしないのが得策だろう。
「はいお父様。昨夜のように取り乱したりはしないと約束します」
そう返事をすると、父は大げさに思えるほど驚き目を見開いた。
きっとベアトリスが物わかりのよい返事をしたからだ。こんな短いやり取りでも、普段どんな目で見られていたかよくわかる。
(愛する娘だけれど、手を焼いている。きっとそんな感じね)
「偉いわ。トリスちゃんならイフリートだって召喚出来るはずよ。がんばってね」
「は、はい。お母様。ご期待に添えるようにがんばりますね」
イフリートがなにかよくわからないまま返した言葉だったが、母はいたく感動した様子だった。