モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
食事を終えて私室に戻ると、朝起こしに来てくれた侍女が待ち構えていた。
彼女はサフィ。クロイツァー公爵家傘下の子爵家三女で、幼い頃からベアトリスに仕えている。年齢はベアトリスより三歳年上の二十歳で、黒髪琥珀色の目の美人だ。
「お嬢様、あまりお時間がありませんので、すぐにお召し替えを」
「え、ええ」
サフィを含めた侍女三人がかりでの身支度が始まる。
彼女たちが化粧と髪の手入れをしてくれている間、ベアトリスは目をつむり頭の中の整理に励む。
ベアトリスは婚約者である王太子に、召喚式とやらに一緒に行こうと誘っていたが、昨日人伝てに断られ激怒して暴れまくった。結果倒れてそのまま朝までふて寝して、起きたら前世の記憶を思い出していたというわけだ。
(前世を思い出したきっかけは、王太子殿下にふられた精神的打撃になるのかな?)
そんなことで?とは思うが、ほかに特別な出来事はなさそうだ。
しばらくすると、だんだんと状況を理解してきた。
このダールベルク王国には生まれつき魔力を持つ者がいる。ほとんどが貴族だが、遠い先祖に貴族出身の者がいる平民にもときどき力が現れる。
魔力の有無は、一歳の誕生日で行う洗礼式で確認し、魔力を持つと判明した場合は、十六歳から二十歳の間の二年間、国立魔法学院に通う義務がある。魔法学院を卒業して初めて一人前の魔導士として認められるのだ。
ベアトリスは魔力を持っているため、十六歳で魔法学院に入学した。
件(くだん)の召喚式とは、魔法学院の教育課程を一年修了した生徒が行う儀式で、魔力を捧げて自身に力を与えてくれる精霊を呼び出すもの。魔力の質と強さで召喚出来る精霊は変化する。