モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
「ぴい!」
「ええっ?」

 カロリーネは驚いたようで、腰を上げかける。けれどパタパタと楽しそうにベアトリスの周りを飛ぶピピを見て、やがてくすりと綺麗に笑った。

「元気いっぱいでかわいいですね」
「そうでしょう? お昼はいつもこの子と過ごしてたんです。食事もするんですよ」

 そう言ってサンドイッチの欠片(かけら)をあげると、ピピはおいしそうに嘴でつつきだす。
 カロリーネは目を丸くした。

「驚きました。食事をする精霊なんて」
「カロリーネ様のウンディーネは食事をしないの?」

 そういえばユリアンもピピの様子を見て、なにか言いたそうな顔をしていた。それほど珍しいことなのだろうか。

「ええ、もちろんです。ウンディーネは普段異界にいて、呼ばない限り出てきませんもの。ほかの精霊もそういうものだと思います」
「そうなの……やっぱりピピは少し変わっているのね」
「ええ、不思議ですね」

 カロリーネは興味深そうにピピを見ている。

「この子は強い力を持っている精霊じゃないけど、こうして一緒にいると落ち着くの。みんなが失敗だって言っているのは知ってるけど、私はピピでよかったなと思ってるわ」

 ほかの人にそんなことを言ったら、負け惜しみだと思われそうなので黙っているけれど。でもカロリーネは素直に受け止めてくれた。

「そうですね。とてもかわいいわ」

 理解してくれる友達が出来てよかった。ベアトリスは久しぶりに楽しい昼休みを過ごしたのだった。
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