モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい

 学院生活は、カロリーネのおかげで予想よりもずっと楽しいものになった。

 日に日に友情を深めて、いまでは敬称なしで名前を呼び合っている。敬語もなしだ。

 成績面に関しては、座学はがんばっているものの、実技ではちっともいいところを見せられないベアトリスだったが、落ちこぼれている姿を周囲が見慣れたのか、以前よりも陰口を言われる機会が減っているような気がしていた。

「ベアトリスごめん、今日は先に帰るね」
「うん、港に行くんでしょう? 楽しんできてね」
「ありがとう」

 カロリーネはうきうきした様子で足早に教室を出ていく。カロリーネの家は商会を経営している。今日は珍しい品物を載せた船が到着するので見に行くのだそうだ。

(私も今日は早く帰ろうかな)

 ベアトリスの放課後は、カロリーネと図書室で勉強をするか、帰りに孤児院に立ち寄って子どもたちと過ごすかの二択だ。
 ただ今日は少し疲れを感じているので、早めに寝るのもいいかもしれない。

 荷物をまとめて席を立つ。そのまま車寄せに向かおうとしたところ、思いがけず呼び止められた。

「クロイツァー公爵令嬢」

 低くよく通る声は、振り返らなくてもユリアンだとわかる。

「は、はい……」
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