魔法のいらないシンデレラ
総支配人室へつながるドアを、杉下がノックする。

「はい」
「失礼致します。お支度整いました」

ドアを開けた杉下は、瑠璃を振り返ってにっこり微笑む。

おずおずと顔を上げると、一生と目が合った。

驚いたように目を見開き、中腰のまま固まっている。

杉下は、二人を交互に見てクスッと笑うと、それでは私はこれで…と言って部屋を横切り、ホテル館内へと戻っていった。

シーン…と部屋が静まり返る。

瑠璃は、どうしたものかとうつむいた。

(えっと…総支配人の依頼っていったい?どうしてこんなことに?)

「あっ…」

やがて小さく一生が呟き、コホンと咳払いした。

「失礼。どうぞこちらへ」

瑠璃のところへ来ると、左手を差し出す。

瑠璃は右手を出して、一生にダイニングテーブルまでエスコートされる。
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