魔法のいらないシンデレラ
「私の方こそ、一生さんに感謝してもしきれません。自分の人生をどう歩いていけばいいのか、どうすれば幸せになれるのか、ずっと悩んで辛かった私を、このホテルが救ってくれました。ここで働いていなければ、私…どうなっていたんでしょう。考えるのも恐ろしい…」

真顔で考えたあと、ふっと笑顔になる。

「1年前、酔いつぶれた私を運んでくださって、ありがとうございました。このホテルで働かせてくださって、見守ってくださって…そして私の身に危険が及んだ時は、全力で助けてくださって、ありがとうございました。誕生日には祝ってくださって、今日も、私の願いを叶えてくださって…」

そこまで言って言葉を止めた瑠璃の顔を、一生がのぞき込む。

「君の、願い…?」

コクリと頷く瑠璃に、何のことだろうと一生は視線を上げて考える。

「私の誕生日に、一生さんがおっしゃったでしょう?ろうそくを吹き消す前に、願い事をって」
「ああ、うん」
「あの時、とっさに心の中で願ったんです。何も考えずにとっさに。自分でも、そんな事を願うなんてってびっくりしたんですけど…それが今日叶って、さらに驚いてます」

ふふっと瑠璃は無邪気に笑う。

「だからさっき一生さんが願った事も、きっときっと叶いますよ」
「俺の…願い」
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