悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
 そうして、あれよあれよと事が進み、私とクリス様の婚約が国内に発表され、婚約披露パーティーの夜が訪れた。

 聖石はお兄様の功績ということになってはいるのだが、公爵領で私が領民の治療を行ったことが広まってしまい、何故か私が『聖女』だと言われるようになってしまっていた。
 時を同じくしてクリストファー殿下との婚約を発表したことで、我がメイトランド公爵家と王家の婚約は大きな反発もなくまとまってしまったのである。シナリオが強すぎる!

 そして今夜は国内の主要な貴族を集め、私達の婚約を祝してパーティーを開くことになったのだ。

 今日の私は、優しいライトブルーのドレスに身を包んでいる。胸元から裾まで金糸の刺繍が入った華やかなオフショルダーのデザインだ。さすが王室お抱えデザイナーの仕事ぶりを感じさせる最高級ドレスだ。

 国宝レベルのブルーダイヤも身につけさせられ、慣れない装いにドキドキしていた。帯剣していないこともあって全く落ち着かない。
 そこへ、同じく着飾ったクリス様がやってきた。

「綺麗だよ、リディア」
「……ありがとうございます」

 クリス様こそスチル通りの完璧な王道イケメンだ。正真正銘、名実ともに、紛う事なき王子様である。
 細身の純白のパンツに、華やかな白シャツ、光沢のあるワインレッドのベストに白のジャケットをまとっている。ベストと同じ色のチーフに、ジャケットの襟には美しい金の刺繍。正装しているクリス様は眩しすぎて直視できない。
 視線を外すと、それを拒むかのように頬に手を添えられた。見上げると、いつもの甘い瞳が私を見つめている。

「お披露目なんてせずに、このまま寝室に持ち帰ってしまいたい」
「ええっ……」
「ふふっ。私のせいで困る君を見るのも嬉しいものだね。……行こうか」

 そうして優しく腕を差し出し、私を広間までエスコートしてくださる。途中の廊下で、大きなガラス窓に自分達が映った。すると、私のドレスは殿下の髪と瞳、殿下のベストは私の髪色をイメージしているのだと気付いてしまった。おしゃれに疎い私でも、これは恥ずかしい! 羞恥で顔から湯気が出そうになった。

「リディ」
「は、はい!?」
「今日は私のそばを離れてはいけないよ?」
「?」
「今夜の君はとても綺麗だから」
「!」

 な、何その顔! ちょっと拗ねたような顔が、本当は私を皆に見せたくないのだと語る。か、可愛いすぎて死ぬ……。

「クリス」

 その時、クリス様の背後からよく通る声がした。若々しく堂々としたその声の方向を向くと、そこには、二年前からずっと会いたかったアラン様が立っていた。

「アラン様!」
「!?」
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