敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 アドランス王国凋落の未来は、きっと彼女の女王就任と同時に決まっていたのだ。私は床に伏した体勢のまま、一歩引いた目線で考察する。
 一年前、女王の一声でアドランス王国は大国ガルニア王国に無謀な侵略戦争を仕掛けた。その結果それはもう物の見事に敗れ、我が国はあっという間にガルニア王国の属国になった。
 この処遇に女王は大層憤っていたが、客観的に見れば王族皆殺しにされたっておかしくない状況だ。属国とはいえ王国の名まで残すことが許されたのは相当温情ある処遇といえる。
 かの国の支配下に置かれるようになって僅か半年、民草の暮らし向きは格段によくなった。王侯貴族が独占していた特権や財産は早々に没収され、正しく民に還元される仕組みが敷かれたのだ。それらを考えると今回の敗戦とその結果である属国化は、アドランス国民にとって僥倖と言えるだろう。
 告げられた輿入れにも異論はなかった。軟禁場所が他所に移るだけで、特段悲観すべきことではない。
「承知いたしました」
< 10 / 265 >

この作品をシェア

pagetop