敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 なにが女王の不興を買うかわからない。一切の感情を殺し、余計な挙動をせず、低頭したまま静かに答えた。
「二週間後、ガルニアからの迎えが来る。それまでに荷を纏め、身支度を済ませておけ」
「はい」
 ……荷物、かぁ。
 従順に返事をしつつ、纏めろと言われた身のまわりの品について思いを巡らせる。
 今身につけている着古したワンピースの他には、ボロ布といって差し支えないほど擦り切れだらけのワンピースと寝間着が一着ずつ、肌着が二枚。後は私を生んですぐに亡くなった母の日記と……。うん、私の荷物はそれがすべてだ。
 ……あ、自作したポプリとハーブの種は一応持って行こう。
 私が裏宮の庭で密かに育てているハーブ。さすがに苗は持って行けないが、これくらいは許されるだろう。
「ふん。蛮国行きを聞かされても顔色ひとつ変えぬか。不気味な上、どこまでもふてぶてしい娘だ。のぅ、呪われた王女よ?」
 忌々しそうに女王が問うが、なんとなく私の答えは求められていない気がして伏したまま無言を通した。
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