敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
「命?」
 水気を拭うのに必死になっていた私は、彼の眉が怪訝そうに顰められているのに気づかずに続ける。
「はい。一歩間違えれば、湖の底に沈められていたかもしれません」
「……ほう、そうか。君がそう言うのなら、俺は命拾いしたのだろうな」
 殿下は不自然な間を置いて、苦笑いで答えた。
「やはりハンカチでは拭ききれませんね。……あ! そういえば、ランロットの鞍に括っていただいた荷袋にタオルを入れていたんです。すぐに持ってきますから、お待ちください」
 私がランロットのもとに駆け出すと、ひとり残された殿下は湖の方に視線を向けた。彼の紡いだ『さっきエミリアがこぼした〝ディーノ〟というのはウンディーノのことか? だとすれば〝シルフ〟共々ガルニア王国建国の神と同じ名だ』という声は、私の耳には届かなかった。
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