敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 シルフが呆れ交じりにディーノをつついた。
《知ったことですか。湖底に沈められなかっただけありがたいと思うのですね》
 ディーノはシルフを一瞥すると煩わしそうに長い銀髪を掻き上げて、氷点下の声音で吐き捨てた。
 ……うわぁ。物騒な言動にブルリとした。
 実を言うと、以前から薄々感じてはいたのだ。優しげな見た目に反し、ディーノが四精霊の中でもっともえげつない性格をしているのではないかと。
 ちなみにディーノとシルフの後ろでサラマンダーはお腹を抱えて爆笑し、ノーム爺はヤレヤレと肩を竦めていた。
「いったい、なにが起こったんだ?」
 殿下が茫然とつぶやくのを耳にして、ハッとして湖上空の彼らに向けていた視線を戻す。なぜか殿下は私の口もとをジッと見つめていた。
 私は誤魔化すように曖昧に微笑んで首をかしげた。
「さ、さぁ? なんでしょうね……と、とにかく不幸な事故ではありましたが、命が無事だっただけよかったです!」
 ポケットからハンカチを取り出すとひと声断り、彼の顔周りから丁寧に拭いだす。
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