敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 まるで重力から解き放たれたみたいに体が軽い。実際私は長身の殿下に半分抱き上げられるように踊っていた。
「すごいわ、こんなの初めて。背中に羽でも生えたようだわ」
 私が夢心地でこぼしたら、殿下は悩ましげに柳眉を寄せた。
「それはいかん。今夜は俺の腕の中から余所に飛んでいってくれるな」
 独占欲を前面に滲ませた熱い眼差しが私を射貫く。
「あっ……」
 ここで曲調が変化し、それに合わせてふたりの密着度が高くなる。ほとんど抱き合っているみたいで、殿下にのぼせてしまいそうだ。
「離さないよ。俺の妖精」
 低い囁きが耳を撫で、彼から滴る雄の色香に息をのむ。優しいだけじゃない激情を宿したセルリアンブルーに、心臓を鷲掴みにされたような心地がした。
 芽吹いた恋が胸の中で生い育つ。
 彼がいずれ正妃様を迎えることはわかっている。だけど、今だけは……。
「なら、私を捕まえていてください」
 花咲きこぼれ、瑞々しく草木が香る春の宵が、私をいつになく大胆にさせていた。
 甘えるように厚い胸にそっと体を寄せたら、腰に回った腕にギュッと力が籠もった。
「おおせのままに」
 ……あぁ、この時間が永遠に終わらなければいいのに。
 殿下のリードに身を委ね、最高に幸せな舞踏会の夜を堪能した。
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