敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 はしゃぐ幼子でも宥めるように、殿下がポンポンと私の頭を撫でる。
 明らかな子供扱いだが、私を見下ろす殿下の表情に呆れの色はなく、どこまでも優しい。無条件に私を包み込んでくれそうな甘い眼差しがくすぐったくて、私はわざと俯いて座りを正した。
 殿下は大きな手で何度か私の頭を往復してから、そっと離した。離れていく温もりが名残惜しかった。
「あら!? 彼、ずいぶんと派手な恰好だわ!」
 舞台袖から派手な衣装と化粧の人がひょっこりと出てくるのに気づき、驚いて目を見張る。
「あれはピエロだな。サーカスの演者のひとりで、コミカルな身振りで観客を笑わせる役だ」
「へぇ! 化粧も衣装もとっても奇抜なのね、面白いわ!」
 サーカスが初めてなら、ピエロを見るのだって初めてだ。興味津々でピエロを見つめた。
「綿菓子はいかがかね~?」
「ほぅ、綿菓子を売り歩くようだ」
 ピエロは白い物が詰まった籠を手に持っていて、軽い足取りで端から客席を回りだす。
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