敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 バルコニーの欄干から下を見ると、外回廊を近衛の騎士や使用人たちがバタバタと行き交いながら、大きな声で言い合っていた。中には悲鳴や怒号も交じっており、城内の混乱ぶりが伝わった。
 王宮の中ですらこの有様なら、街は大丈夫なのだろうか。言い知れぬ不安が胸に押し寄せる。
 まずは状況を知ろうとバルコニーから室内に戻り、殿下の部屋に繋がる扉を叩いたが返事はなかった。どうやら昨日から政務室に詰めたきり、部屋に戻っていないらしい。
 廊下に出て、殿下の政務室を訪ねようと踏み出しかけた足を止める。しばしの逡巡の後、私は政務室とは反対の方向へ駆け出した。

 目指したのは、王都を一望できる尖塔の屋上。
 王宮中央から天に向けて高々とそびえる円錐型の尖塔は、周辺諸国との小競り合いが頻発していた古い時代は見張り台や司令塔の役割を担っていたという。しかしガルニア王国が大陸において超大国としての地位を確固たるものにしてからは、それらの機能を失っている。当然、見張り役の近衛騎士などもいない。
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