敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 階段から続く木戸を押し開け、鋸壁と呼ばれる凸凹型の外壁まで歩く。周囲に風を遮るものがなく、吹き付ける夜風が肌に痛いくらいだが、緊張のせいか寒さはまるで感じなかった。
「っ、すごい風だわ……」
 高所それ自体を怖れはしないけれど、強風で体が煽られると落下のリスクが頭を過ぎって背筋が冷えた。
 相変わらず空は不気味な赤さで、天変地異の前触れかと見る者の不安と恐怖をかき立てる。急にこんな空を見せられたら、恐怖に駆られた群衆が右往左往するのも仕方ないだろう。
 慎重に足を進め、私の胸下くらいの高さの鋸壁の凹んだ部分に手を置いて眼下を眺める。
 王都の街は混沌とし、風に乗って怒号や悲鳴が聞こえてきた。状況は私の想像より、遥かに悪かった。
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