敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 無理なものは無理だ。限界を迎えた私は、アニータの手からちょっと強引にクリームが入った小瓶を取り上げた。
「仕方ありませんね。では、全身にしっかり伸ばしてくださいね」
「ええ、わかったわ」
 ホッとひと息つきながら、おざなりに塗りこめる。
 その間にアニータが新品のネグリジェを出してくれて、クリームを塗り終わった後で袖を通した。
「……ねぇ、アニータ。このネグリジェ、少し生地が薄すぎるんじゃないかしら? ほら、春とはいえ朝晩はまだ冷えるし……厚地の物に替えた方がいいと思うの」
「ふふふっ、その心配はいりませんわ。だって、お寒いようでしたら殿下に温めていただけば──うぷっ!」
 反射的にアニータの口を両手で押さえた。
「ちょっ!? アニータったら、なに言ってるの……!」
 そうなのだ。私は今夜からジーク様の部屋で一緒に眠るよう言われている。
 アニータの口を塞いでみたところで、事実は変わらない。……要するに、これから初夜なのである。
< 255 / 265 >

この作品をシェア

pagetop