敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 事前に聞かされていた通り、姫はこれまで社交の場には縁がなかったようで、そのカーテシーは宮中舞踏会を闊歩する女たちのそれに比べて少し拙い。
 しかしそれを補って有り余るくらい彼女には不可思議な気品がある。微かな表情の変化やその物腰、彼女を彩るすべてが他と比類なく愛らしい。
「こんなに美しいあなたを妃に迎えられる。俺は果報者だ」
 愛しい姫を前にして感極まった俺は名乗り返すことも忘れ、気づいた時には心のままを声にしていた。
 耳にした彼女は一瞬ぽかんとした顔をする。そんな表情すら愛らしい。
「──えっ!? 今、妃とおっしゃいましたか!?」
 姫がはたと気づいた様子で、驚きの声をあげる。
 目を丸くする彼女に、俺はフッと口もとを緩めてその場に片膝を突いた。
「俺はジークフリード・フォン・ガルニア。ガルニア王国の王太子で、あなたの夫となる男だ。我が妃よ、あなたを歓迎する」
 取ったままの小さな手を宝物を戴くように持ち上げて、その指先にそっと触れるだけの口付けを落とす。
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