敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 ちなみにエミリアに対面した日、ハウイットは噂とあまりにも異なる姿に驚き、一刻も早く俺に報せようと取るものも取りあえず筆を執ったらしい。そして動揺のあまり防水処理を忘れたという未来の宰相らしからぬオチである。まぁ、気持ちはわからないでもない。
 とはいえ水濡れの部分にまさか【気立てがよい】などという単語が収まると想像できるはずもない。おかげで俺はエミリアの人となりを勘違いしたまま、初対面で彼女を牽制するひどい言葉を投げつけてしまった。エミリア自身さほど気にした様子がないのが救いだが、できることなら時を巻き戻して即座に撤回したい。
「……なぁ、ハウイット」
「はい」
 俺が軽口に答えずソファに腰を下ろすと、ハウイットは察した様子で卓にトレイを置き、向かいのソファに腰掛ける。憎たらしい男ではあるが、こいつはいつだって俺の表情ひとつ仕草ひとつから的確に機微を読む。幼少期からずっと腹心として重用している所以だった。
「俺はエミリアのように心根の清らかな女性に初めて会った」
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