敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 ガルニア王国の正装である詰襟の装束に緋色のマントを纏った男性は、圧倒的な気品と存在感を醸していた。ただの侍従でないことは瞭然だった。
 ……誰だろう、大臣とかかしら。私なんかの出迎えに、わざわざ偉い人が来てくださったの?
 鍛え上げられた筋肉質な体形が着衣越しでも見てとれる。祖国アドランスの男性より総じて大柄なガルニア王国の民の中でも目の前のその人は特に長身で、私とは頭ふたつ分の差がありそう。そしてなにより印象的なのは艶やかな黒髪と同色の長い睫毛に縁取られたふたつの瞳。澄んだ湖面のようなセルリアンブルーに囚われて、知らず息をのんだ。
 礼を述べ差し出された手を取ると、そっと握って引き寄せられた。私の手をすっぽりと包み込んでしまう大きな手。意識したらトクンと鼓動が跳ねて、そわそわと落ち着かない思いがした。
 地面に降り立った後も、なぜかその人は私の手を離そうとしなかった。
『俺はジークフリード・フォン・ガルニア。ガルニア王国の王太子で、あなたの夫となる男だ。我が妃よ、あなたを歓迎する』
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